不動産屋の残業代請求について
柏市 賃貸 不動産屋の残業代請求について
今回は不動産屋の残業代請求について書いてみようと思います。
不動産屋を経営する立場として自分の首を絞めるかのようなテーマですが大事な問題なので書いてみます。
社会人として会社勤めをする方々にとって残業を全く経験した事がない人は少ないのではないでしょうか。
企業によってはサービス残業当たり前、上司から仕事を押し付けられて帰宅できない、もしくは自発的に
会社に残って仕事をしようという責任感の強い方もいるかもしれません。
しかしながらこの残業代請求という点が表面化する事はあまり多くはないと思います。
会社に就業中ともあれば請求しづらい、何を言われるかわからない、解雇されるのではないか、そもそも
残業代を請求するという意識がない、など様々かと思います。
不動産屋の就業時間
みなさんも会社からの帰りが遅くなって駅から自宅へのの帰り道、まだ灯りが付いているオフィスを見かけた事は
ありますでしょうか。不動産屋はその1つです。
不動産屋の就業時間は他業種と比較すると長いと思います。
朝早くから出社し夜は23時、もしくは0時まで残っている社員の方も見かけます(もちろん店舗によります。
定時で帰宅できる不動産屋もたくさんあります)
また休日も週休2日もらえる不動産屋は少ないのではないでしょうか。もちろんこれは他業種にも言える
事ですが恵まれた就業環境が与えられている店舗はまだまだ少ないのではないかと思います。
例えば一日3時間残業した場合(法定時間の8時間を超えた時間)、その残業時間は月に75時間にも
なります(25日勤務の場合)
弁護士業界から見る残業代請求問題
弁護士さんの業界から見てもこの残業代請求という分野は今後も注目されていく問題だと思います。
過去の消費者金融のグレー金利問題が一服し、弁護士業界が次に注目すべきカテゴリはこの残業代問題と
考えられる方もいるかと思います。
弁護士さんの報酬としても完全出来高制(例えば獲得残業代金額の30%など)の所や、着手金+出来高制
の所、出来高+裁判に移行した場合に費用が発生する会社など様々です。
例えば残業代で獲得した金額が500万円であった場合、100万円以上の報酬が発生する事も珍しくなく
今後競争も更に広がっていくと考えられます。特に就業時間が長い不動産やサービス業など請求事案が
発生する可能性もあるかと思います。
残業代請求は証拠が命なのか
かといって残業代請求が自分自身で出来ないかというと、そういう訳でもなく弁護士先生に依頼をしなくとも
請求自体は可能です。労働基準監督署や労働局など公的機関と相談しながら個人で請求を立てる事は手順自体は
難しい事ではありません。しかしながら残業代請求の金額計算は多少複雑である事、証拠が個人では収集しにくい
事、弁護士に依頼をしないと会社側が本腰を入れてくれない事など個人ではなかなかカバーしきれない問題
もあります。
また残業代請求には証拠が必要になり一般的にはタイムカード・雇用契約書・就業規則・日報や勤怠メールなどが
挙げらると思います。特にタイムカードは請求証拠としては重要になってくるものです。
しかし不動産屋に限らず昔ながらの経営されている個人商店等の場合、契約書類やタイムカードまで整備が整ってい
ない店舗も中にはあり、証拠収集が難しい場合も多くあります。
証拠の提出を求める事は可能ですが、実際にその書類等が残っていないケースも多く、また証拠の提出を拒否する
お店もあるかと思います。その場合、請求自体が困難になる可能性もないとは言えません。
残業代の計算
残業代の計算方法について簡単に書いてみます。
パートさんやアルバイトさんは自給で働いている事が多いため問題はありませんが、正社員など月給制の場合は
残業代計算をする際にはまず時給に換算してから計算します。
当たり前かもしれませんが計算方法は
「月給÷月の所定労働時間数」 になります。
しかし次の手当は残業代計算に含まれない事が多いので注意が必要です。労働とはあまり関係のない手当は
除外されるという事になります。
家族手当
別居手当
通勤手当
住宅手当
教育手当
臨時に支払われた賃金
就業時間が長いと残業代がもっと増える?
不動産屋は割と就業時間が長い職業と一般的には言えると思います。
もちろんそのような店舗ばかりではありません。しかし多いお店では残業時間だけでも100時間を超える
お店も中にはあるのではないでしょうか。
残業時間の割増率でいえば、法定時間を超えた部分は通常1.25倍の掛け率で金額が計算されます。これは
良く知られた事かと思いますが、例えば残業時間が月に60時間を超えた場合は60時間を超える部分に
関して1.25ではなく1.5で計算されるようになります。
もちろん労使協定を結ぶ事や会社の規模によって緩和条件もあるかと思いますが、実際にこの残業代を
請求された場合は数百万円の残業代は会社にとって致命傷になる事もあります。個人商店等なら尚更では
ないでしょうか。
残業の請求額が2倍に?
通常残業代請求をした場合、弁護士に依頼したとして、相手側にも弁護士が付けば素人相手に話を進めるより
話がスムーズに運びやすいという話を知り合いの弁護士さんに聞いた事があります。
しかし思うように話が展開せず、結果「裁判」になるというケースもあります。相手が全く案件について無視を
続けている場合や、残業代を断固認めないと反論してくるケースが該当するかと思います。
裁判所に未払い残業代を請求するときに、「付加金」というものを請求できる事があります。
この付加金とは残業代の未払金と同額の金額を併せて請求できるというものです。
つまり請求金額が2倍になるという事になります。これは訴えられる側にとっては大きなダメージです。
また残業代には遅延損害金というものも認められており未払い時から年利6%の利息が付きます。
さらに請求側の従業員が退職していれば遅延損害金は14.6%に移行します。
もちろん裁判になって付加金や遅延損害金の支払い判決が確実に出るとは限りませんが、会社側にとっては
これは大きなプレッシャーです。
その為、通常は裁判になる前に解決しようという動きが一般的かと思います。
不動産業界も含めて特に零細企業や昔ながらの個人商店では就業規則や雇用契約書、タイムカードなどの
書類関係の整備が整っていない会社も多い事かと思います。しかし後になって裁判で証拠書類の提出を
求められた時に、そもそもそのような書類が存在しないという会社の言い分が裁判所で通用するとは思えません。
その為、普段から書類関係のことも含めて正確に処理していかなければいけないなぁと痛感しています。
私も不動産業界に携わって時には残業が長くなる時はあります。それくらい大変な業界である事は確かだと
思います。実際業界内では2~3か月で退職を希望する従業員も珍しくなく入れ替わりの激しい職業とも
思います。1年勤めれば会社に店舗によってはベテランさんの域に入る事もあるのではないでしょうか。
職業を問わず希望をいえば仕事を効率よく行い、業績やノルマも程良くこなし、定時の時間内にスッキリと
帰宅ができる、そんな環境を目指したいものですね。