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 賃貸の手数料無料会社の猛追

今回は賃貸の多様化してきている手数料無料会社について少し書いてみようと思います。

賃貸において不動産屋の手数料収入は主に仲介手数料になります。

通常であれば仲介手数料は家賃1か月分が普通でした。もっとも普通とはいっても本来は貸主と借主が折半で

0.5か月分ずつ負担し合うのが通常ですが契約時に借主の同意を得た上で借主に1か月分の仲介手数料を負担させる

傾向が今でも強いと思います。しかし実務的にはこの「借主に同意を得て」という部分は重要事項説明時にしっかり

と説明される事は少なく、むしろさらっと読み上げて借主が1か月分負担する事が当然のような雰囲気さえ感じさせ

る説明も中には多くあります。またその後大手をはじめとして仲介手数料半額を掲げる不動産業者も多くなって

きました。半額というとお得な感じもしますがこれが本来の手数料体系であり貸主と借り主が半分ずつ負担するとい

う基本の形に戻ったという事になります。それが純粋な半額手数料であれば良いのですが一部の半額業者の中には

害虫駆除費用やルームクリーニング費用・オプション費用という名目で仲介手数料とは違う名目で埋め合わせをする

という悪徳な業者があるのも事実だと思います。

仲介手数料無料会社の誕生

しかしそんな中で一部の業者の中には仲介手数料を無料とする不動産業者も現れはじめました。

都内を中心に仲介手数料を無料と案内し、今までの業者と同様に家賃減額交渉なども引き受けるというものです。

仲介手数料無料でなぜ事業が成り立つのかという点においてはご存じの方も多いかと思いますが、一定数の物件

においては契約を成立させると貸主(大家さん)から広告料などの名目で報酬を頂ける場合もあり、お客様から

仲介手数料を頂かなくてもビジネスが成り立つというものです。業界ではADと呼ばれていますが、1契約につき

家賃1~2か月分のAD(報酬)が大家さんから支払われる事になります。この傾向は特に地方において顕著に

出てきており賃貸の建物がダブつき完全に借り手市場である事が原因です。不動産屋の営業マンとしてもADが

出ない物件よりもADの出る物件をお客様に薦めたがるのは本心であり、自分の営業成績にも直結しますから

お客様の希望している物件よりもむしろADの出る物件を優先して部屋を薦める人もいると思います。

仲介手数料無料の会社というのはその他にも自店のテナントを安い賃料の所に借りていたりポータルサイトに

大量に広告をばらまくなんて事もしない事がおおいです。無料のネット媒体Youtube、SNSなどを有効に活用して

告知を広めていくという戦略が多いように思います。また仲手無料の店舗は駅前の路面店に出店するような事は

ほとんどありません。またAD以外の他の収益に注目を置くという事も特徴的です。例えばその店舗を通して

インターネット回線を申し込めばプロバイダから4~5万円の収益がもらえるのでその内の3万円くらいをお客様に

キャッシュバックもしくは割引という形で還元するというものです。

また業界内でも仲介手数料無料の不動産屋というのは実際のところ、良く思われません。他の業者が手数料1か月

で案内しているのに手数料無料で案内されてはその会社にお客様を持っていかれてしまうからです。

また嫌がらせというほどでもないですが、不動産業者間というのは横の繋がりが強く、例えば1つの新築マンション

を地域の不動産業者で協力して客付けしようという声があったとしても、仲介手数料無料の会社にはそのような

声がかかる事は少なくある意味では蚊帳の外状態です。もっとも手数料無料会社はそのような事にも慣れっこなので

ウチはウチ、他店は他店というスタンスを貫き通している所が多いように思います。

しかしそんな仲介手数料無料会社にも1つ欠点がありました。それはADの出る物件を中心に案内する傾向がある

という事です。手数料無料の会社はADが主な収入源ですからADの出る物件を中心に案内するというのは当然といえ

ば当然の気もします。もちろんADが出る物件だけを紹介している訳ではなく例えばお客様からこの物件がいいと

名指しをされればその物件を内見すると思います。ただそのような物件がADの出ない物件であれば当然仲介手数料を

無料にする事はできないので、仲介手数料を3~6割くらい割り引いて紹介をするという事になります。

AD1か月分ほどの収益にはならなくてもそのわずかな仲介手数料がお店の収益になるという事になります。

そのためお客様には一部の不満の声もありました。ADが出る物件というのは人気があまりない物件や借り手が

見つかりにくい物件という事も言えるので、例えばお客様が新築の物件や駅近の物件など人気の物件を希望した

場合には仲介手数料を無料にする事ができない事が多いからです。

 

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今後の仲介手数料無料会社の形態

しかしそのような事態を突き抜けるように新しい形態の仲介手数料無料の会社が幾つか誕生してきました。

ADが出ない物件でも仲介手数料を無料にするという不動産会社です。

お客様から仲介手数料ももらえず大家さんからADももらえない物件なのにどのようにして収益を上げるのか、という

点が疑問になりますが、その収益構造は「会員制サイトの構築」というものでした。

その不動産会社を利用するにはそのサイトの会員になる必要があり利用料金は1か月700円~1000円程度

というものです。もちろん退会はいつでも自由で例えば引っ越し先の新居が決まったらその時点で退会という事も

できるようです。しかし700円~1000円の月会費ではビジネスモデルとして成立しないのではと考えて

しまいそうなものですが、会員数は予想以上に多くサイトの中には1万人を超える会社もあります。

月額1000円の会員が1万人いたとしたら単純計算で月に1000万円の収益が入る事になりますから

充分にビジネスとして成立するものかと思われます。またもちろん紹介する物件の中には大家さんからADが出る

物件も含まれていると思いますので会員費+ADが主な収入源になっていると思われます。

そもそも今までの不動産屋の営業方法に疑問を抱くお客様も多くいました。昔はネットやスマホが普及していなかっ

たので不動産屋に行って不動産屋に部屋を紹介してもらい不動産屋に車で内見をお願いするという方法を取るしか

なかったと思います。しかし今ではどうでしょうか。スマホの普及により外出先でもいつでも部屋探しが出来ますし

サイトの中ではその部屋の写真が20~30枚も掲載されていてわざわざ内見をしなくてもスマホ上で内見体験

ができると言っても過言ではないと思います。またその地域の事でもネットを見ればいくらでも調べられますし

街の雰囲気や地図もGoogleマップやストリートビューを利用すればいくらでも確認できます。つまりネットやスマホ

の流通によって不動産屋自体の存在価値自体が見えづらくなってきているのではないかと思われます。もっと

突き詰めて言ってしまえば部屋を内見しに行くのに不動産屋に付き添ってもらう必要がないと考える人もいるでしょ

う。営業マンに気兼ねする事なく友達とだけで一緒に見てみたい部屋に内見しに行く事ができたら素晴らしい事

だと思うし自分が住みたい部屋の選択肢だって広がると思います。しかしこのようなサービスはなかなか普及

しにくい事情があります。お察しの方も多いと思いますが物件の鍵は管理会社が保有しているからです。

素人のお客様に鍵を持たせて営業マンの付き添い無しで内見をさせに行くというのは鍵の紛失や設備品の盗難の

可能性もある事からなかなか実現しにくい部分があります。また現地鍵(ダイヤルロック)であったとしても

一般のお客様にダイヤル番号を教えるのは危険が伴います。もっともそのような事件時には鍵の交換を保障する

サービスの提供約束等があれば納得する管理会社も出てくるかと思いますが地道な営業活動が必要になってくる

ように思います。でも実現したら本当に素晴らしいサービスですね。

そもそも不動産業者間で扱っている物件は一部を除きレインズやATBBなど流通システムを利用した部屋の紹介になる

のでどこの不動産屋に行っても同じ物件を紹介されるという現象が少なからず起こります。もちろん自店だけしか

紹介できない専任物件をお客様に紹介している不動産屋も多くありますが、お客様から見ればどの不動産屋が限定

物件を紹介してくれるのか見破るのは困難です。

また今までの不動産屋はまず店舗まで出向き、営業マンと内見に行く部屋の相談をした後にやっと内見という流れ

でした。またその物件がお目当てで店舗に行ってみたものの、実はその物件はおとり物件で実際には存在しない、

もしくは居住不可の物件だったなんて事は結構多くあります。

その点においても新しい形態の仲手無料会社は違う形態を取っているようで、内見をする時でも基本的に

「現地待ち合わせ」の形態を取っている事が多いです。現地待ち合わせであればおとり物件も回避できますし

店舗に出向く時間の無い人は現地待ち合わせであれば時間を短縮する事も可能かと思われます。

また新形態の仲手無料店舗はマッチング機能も併せ持っている会社が多いです。要するに自分の希望条件

(家賃・間取り・駅からの徒歩圏など)だけ入力しておけば、その後は自動的にその会社から希望条件に

マッチする物件が自分のPCやスマホに送られてくるというものです。またその物件は未公開物件が多く含まれてい

るという点も会員制サイトの価値を底上げしているように思います。忙しい会社員の方であれば自分で不動産

屋に足を運ぶのも難しい場合もあるでしょうからマッチングする物件が自動的に送られてきてお客様はその中から

希望の物件を選ぶだけという利便性を兼ね揃えていると思います。ここまでの一連の流れを見てみるとお客様は

希望する物件を登録しておけば後はその中から好きな物件を選択し内見も現地集合・現地解散で良くその上で

仲介手数料が無料という事なので、今まで不動産屋に足を運んで物件を紹介してもらい内見予約を取って家賃1か月

分の仲介手数料を取られていた時と比べるとはるかに利便性が向上しているように思います。

また実際にかかる費用としてもかかるのは基本的には会員費であり1か月部屋探しをするとしても1000円くらい

でしょう。今までの業者が仲介手数料が家賃の1か月分や半月分もかかっていた事と比較するとかなりの減額に

成功しているのではないかと思います。もちろん部屋探しが長引けばその分会員費は加算されていくと思われますが

例え1年間部屋探しをしたとしても会員費は1万円前後でしょうからかなり割安かと思われます。

今まではお客様にとっては敷金・礼金・仲介手数料の三本柱がネックとなり、引っ越しが気楽にできるという感覚は

なかったかと思いますがこのようなサービスが拡充する事によりもう少し引っ越しが身近なものになるのかも

しれません。

しかしこのようなサービスにも危惧する点が挙げられます。

まずは個人的に疑問に思う事はどのようにしてそのサービスをお客様に知ってもらうか、という点が挙げられま

す。そもそもPCやスマホの検索画面上で1ページ目に出てくる不動産サイトというのは物件情報が豊富であったり

細めに情報が更新がしてあったりその地域に関してサイトの内容にオリジナリティが強かったり検索ユーザーが

多かったりとSEOに適しているサイトが上位表示される傾向があります。会員制サイトというのは通常はID・

パスワードを入力してログインするものなのでその会員制サイトの内容を検索エンジンのクローラーが巡回できない

恐れがあるように思います。もちろん強烈なサービス内容なのでお客様のクチコミによる波及効果→

サイトランクUPも十分期待できるものと思いますが当面は他の広告媒体に頼って広告活動に力を入れる

ようになるのかなと個人的には思います。とは言っても仲手無料会社は広告料をかけない事が基本の

ようなものなのでどのように広告していくか。。いずれにしてもどのようにしてユーザーに告知を

していくのか参考にしていきたい所です。

また会員数が膨大になっていくに連れて十分な対応ができるのだろうかという所も難点として

挙げられるかと思います。会員数が何万人・何十万人となると問い合わせ件数も膨大です。

物件紹介はほぼ自動化できるとしても物件案内には人員が必要で、土日や連休・特に1~3月などの

繁忙期には案内がひっ迫する事が懸念されます。東京や関東圏の案内だけとしても1日にさばく案内量は

相当なものになるのではないでしょうか。それだけに対応できる人員には苦慮していくものと思われます。

人員を確保するにしても不動産知識がが豊富な営業マンを大量に確保するのは簡単なことではありません。

素人の営業マンを雇うとなると接客内容が希薄になったり希望内見日に内見出来ない等の理由から

顧客離れが進むことにもなり兼ねません。その分商圏を絞った営業に尽力する事になりかねません。

また最後に危惧する点を挙げるとすればその内見方法です。現地待ち合わせ・現地解散という内見は

確かにユーザーの期待に沿ったサービスかと思われますが、一方で通常の不動産屋がわざわざ自社まで

来店してもらってまでお客様を誘導するのには理由があります。不動産営業というのは昔からの

慣習として「店で始まり店で終わる」が営業手法の基本です。車で案内する事によってお客様との

接触回数を増やし親近感・信用を得て店→物件→店と車で送迎する事により潜在的な恩を売り

内見が終わった店内でクロージング、1日の内見が終わった不思議な達成感もあり、また時間都合上

何日もこのような内見に時間を割く事はできない→これ以上の物件は見当たらなさそうだし申込み、、

という流れになる事も多いです。もちろん店内であればその場で申込み手続きに持ち込む事もできます。

また現地待ち合わせというのは確実にお客様が現地に来るという確証が持てません。もちろん

店まで来店してもらう約束をしたとしても約束が守られないお客様もいますが、営業マンとしては

店内にいれば他の仕事に着手できますが現地まで行っている場合、まず店舗まで戻らなければならない

という大幅な時間ロスがあります。またお客様が現地に来たとしてもその物件を気に入るとは

限らず、他の物件を紹介して欲しいと頼まれても現地では紹介が困難です。

また今まで仲介手数料無料のシステムから撤退する会社も少なからずありました。仲手無料というのは

集客しやすい事から不動産屋にとっては麻薬のような中毒性があり、かといって途中で中止するにも

上手くいかず、需給バランスの折り合いが付かずに結局撤退してしまうという結果になる事もあります。

しかしそのような点をクリアできればお客様にとっては魅力的なサービスである事は間違いないと思うので

今後の躍進を期待したい所ですね。

またそもそも最近の引っ越しといえばファミリー世帯でもない限り、単身世帯など軽荷物での引っ越しが中

心になってきているので、部屋を模様替えするように引っ越しも半年~1年くらいのスパンで頻繁に行う事

ができるようになれば別の新しいマーケットが確立されてくるような気もします。引っ越し業界・家具業界

・リフォーム等々期待は拡がる所ですね・

もしかすると数十年先には不動産屋の従業員の半分がPCエンジニアやプログラマーで構成されているという

時代が来てもおかしくはないのかもしれません。

長く慣習化されてきた不動産業界の手数料体系にも見直しの時が来ているのではないでしょうか。

 

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